クレタ人の踵

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2本足で歩こう[2]

2本足で歩こう[2]
フィードバックしないで歩行する


関連 2本足で歩こう[1]

 FMの家はかなりの田舎にある。最寄り駅に最近やっとエスカレーターがついたくらいだ。FMはじじいで運動がキライなので、階段でなく、当然、エスカレーターを利用している。
 このエスカレーター、もちろん省エネ型である。人が乗っていないときは止まっているヤツで、誰かがやってくると乗り口手前にあるセンサーが感知して動きだす。で、何かの都合でセンサーが働かなかったらしい。いつもどおりにエスカレーターに乗ろうとしたFMは乗り口で「カックン」してしまったわけである。
この「カックン」経験した人はそこそこ多いかなと思う。
 動いているハズのエスカレーターに向かって出した足が、エスカレーターが止まっていたため、予想着地点がずれてその落差分「カックン」するわけである。ようはそれだけなのだが、よく考えてみるとこれは少し不思議だ。

人間は意識せずに適切な歩行パターンを切り替えている

 止まっているエレベーターは段差の少し大きな階段と一緒である。ところが、何かの都合で止まっているエレベーターを上るときに、我々は非常な違和感を覚える。我々はエレベーターにあまりにも慣れてしまっているので、階段とエレベーターで我々自身が歩き方を変化させていることを普段は忘れてしまっている。エレベーターが止まることで、はからずも、そのギャップが露呈してしまうのである。
 幼児をはじめてエスカレーターに乗せるときは、大人が手を繋いでいても大変である。たぶん、FMだって最初にエスカレーターに乗ったときは、かなり苦労したはずだ。しかし、いったん乗り方を覚えてしまうと、後は普段歩行しているのと大差なくなってしまう。
 このエスカレーターの件では、もう二点、重要なことがある。我々はエスカレーターに乗る前に、動作しているかどうかのチェックをかなり怠っているということである。一連のシーケンスでチェックポイントを省略するというのは、ロボットやコンピュータでは、まずありえないことだ。
 あと一点は、基本的に人間の歩行では接地情報をフィードバックしていないらしい、ということである。「カックン」したあとはびっくりして、動作が一瞬止まってしまう。もしも接地情報が人間の歩行シーケンスに組み込まれてフィードバックがかかっていれば、接地した時点で何ごともなかったかのごとく続けて歩行できるハズなのにである。

人間はリアルタイムのフィードバック情報を有効利用できない

 人間の運動制御は基本的にフィードフォワードである。これには理由がある。知覚側の神経伝達速度が遅く、運動制御に使うには遅延が大きすぎるのである。以下の表を見て欲しい。

分類
直径(マイクロメートル)
有髄
速度(m/秒)
機能
12-20
70-120
運動神経
5-12
30-70
触覚、圧覚
3-6
15-30
筋紡錘に関する
2-5
12-30
痛覚、触覚
B
<3
3-15
自律神経
C
0.4-1.2
-
0.5-2
痛覚、反射、嗅覚

「ビジュアル生理学」より
http://bunseiri.hp.infoseek.co.jp/

 筋肉を動かす運動神経に比べて、知覚神経の伝達速度は一桁落ちる。数十ミリ秒のオーダーで信号遅延が起こってしまい、これだけでも制御ではかなりつらい。
 アウトプット側の運動神経との落差も問題である。伝達速度の差だけではない。人間の神経線維網は電気回路と異なり、信号を転送中でも次信号を送出できる。いわばバースト転送みたいなもので、コマンド送出量を飛躍的に増加できる。結局、アウトプット側とインプット側の単位時間当たりの情報伝達量に圧倒的な差があって、フィードバック制御など最初から望めない状況なのだ。
 「考えるな、体で覚えろ」と言われる所以はここにある。訓練で体得した一連のシーケンスコマンドの大量投入で、人間は俊敏な動作を実現できるが、間に知覚情報による環境認識を挟むと、途端に、スピードがガタ落ちになるのである。
 環境認識は適切なシーケンスへのトリガーでしかない。このトリガーを適所に挟みながら、個々のシーケンスをシームレスに繋ぐ、これが人間の運動機能の秘密である。

オンオフセンサーとしてではなく観測機としての知覚

 人間の知覚神経の伝達速度は確かに遅い。しかし、運動神経にはない優位点も持つ。
 運動神経は一本の神経索では基本的にオンオフ情報だけを伝達すれば良い。一個の筋肉細胞を収縮させるかどうかの情報を送るだけで良いからである。
 知覚神経系は伝達速度が遅い代わりに広いダイナミックレンジを持っている。人間の知覚はオンオフセンサーではなく観測機として外界の把握を行う。それは、リアルタイム制御には使えないが「経験」となって蓄積されていくのである。
(つづく)

まとめ
 人間が運動制御をフィードフォワードで行っているのはフィードバックができないからだ。
 神経伝達速度は体の大きさに関係ないので、「大男総身に知恵がまわりかね」は本当。
 FMが「カックン」したのは年のせいではない(と思う)。
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